チェコ人作家のアンナ・ツィマ(Anna Cima)夫妻が川越サツマイモまんが資料館を訪問

2020年6月27日、チェコ人作家のアンナ・ツィマ(Anna Cima)夫妻が川越サツマイモまんが資料館を訪問し、おいもガイドと川越の話で交流した。

▲アンナ・ツィマ夫妻(左)、ベーリ・ドゥエル館長(右)

きっかけはセルビア婦人の来館

サツマイモまんが資料館が開設されたことがきっかけにより、偶然にも或るチェコ人作家の小説の舞台のひとつが川越という事が分かることが起きた。

その話の始まりは2020年3月21日(土)だった。山田英次氏と共にイモまんが資料館の勤務時間中に、ひとりのヨーロッパの(セルビア人で東京在住)中年婦人が突然現れ、入館して来た。

婦人「サツマイモが大好きだから入ってきたよ」

私(ドゥエル)は、思わず「どの様に食べますか?」

婦人「サツマイモを蒸して、85%カカオのチョコをその上にのせ、溶かして食べている。美味しいよ」

私「お国でも食べていましたか?」

婦人「セルビアの出身だが、サツマイモは食べていなかった。私の夫は五年程前に東京へ転勤させられ、娘と共に来日し、日本のサツマイモをはじめて食べてみて、それから大好物になってしまったよ」

私「それで川越へ来た目的は?」

いろいろ聞くと、どうやらその婦人は、川越が登場するチェコ人作家の小説を翻訳したらしく、その小説は日本語訳にはまだなっていない。チェコ語で書いてある小説をセルビア語に訳している。プラハや渋谷だけではなく川越も登場するので、小説の翻訳を正しくできる様に川越の様子を実際に見にきたとのこと。

しかし、話しの途中で突然、彼女に電話がかかってきて一緒に川越に来た夫が、1階のいも菓子店内(紋蔵庵・蔵の街店※)で待っていて、すぐ帰りたいということだった。残念ながら、数分間しか話しができないままに、急に消えてしまった。

※紋蔵庵:小泉昌弘社長はその店舗の2階を無償で資料館のために提供して頂いている。

▲アンナ・ツィマ夫妻(左)、山田英次館長(右)

川越が舞台の一つ、小説『渋谷で目覚める』

同婦人の連絡先や同小説の表題や著者名などはまだはっきりと聞いていなかったので、困ってしまった。川越が小説の舞台のひとつであったので、どうしても、もう少し具体的に内容を知りたいと思い、在東京チェコ大使館などへ連絡して問合せてみた。その結果、アンナ・ツィマ(Anna Cima)という若い女性が小説の著者であることが分かった。そのアンナ・ツィマの小説の題名は『渋谷で目覚める』であった。その日本語訳の小説『渋谷で目覚める』は2020年冬頃発行される予定であるという。2018年発行のチェコ語版はとても良く売れている様で、重版もされている。母国チェコでは新人の作家賞も受賞。さらにヨーロッパでは、6つほどの言語に翻訳する予定でもあるという。しかし、英語訳は残念ながら、予定は無いとのことである。

▲山田館長製作の紙芝居『焼き芋大好きおばさん』上演の様子

ツィマ夫妻を川越へご招待

著者本人ともネットで連絡がとれ、2020年6月27日(土)に、東京在住のアンナ・ツィマ(29歳)さんとその夫のイゴル・ツィマさんにサツマイモまんが資料館へきていただき、山田英次氏と共にいろいろとサツマイモなどについての話ができた。完熟したべにはるかの超甘い焼き芋や紋蔵庵のいも菓子なども、初体験として食べながら楽しく談笑することもできた。とくに資料館内での生サツマイモの各品種展示に興味をもったようで、サツマイモの皮が同じ紅色でも、各品種によりそれぞれ味違いや肉色違いがあることを説明すると、とても感激した様であった。また、山田氏製作のイラスト付き焼き芋関係のユーモア紙芝居『焼き芋大好きおばさん』の上演(約30年ぶり)も、笑いながら楽しんでもらった。

資料館見学後の川越の観光地ミニ散歩では、菓子屋横丁で川越サツマイモ商品振興会(サツマイモまんが資料館の開設主体で、運営を支えて頂いている団体)会員の井上俊彦さんの紹介はできなくて残念だったが、井上さんは毎週末の土日曜や休日に菓子屋横丁で、長年、出店の焼き芋屋を開いている。資料館内で夫妻に食べていただいた焼き芋は井上さんの焼き芋で、事前に試食用として用意したものだった。2人はそれを喜んで食べ、初めての体験で感動したようだった。チェコのプラハ出身で、母国の市場にもサツマイモが売られている様であったが、買った機会はまだなかったとのことだった。

昨年まで、ツィマ夫婦は埼玉県の朝霞市住んでいて、近くの川越へよく見学へきて、古い蔵造りの町並みなどに深い影響を受けたとのことだった。そのためアンナさんの小説に、川越もひとつの舞台として登場を決めた様である。小説に出てくる人物の一人は、川越生まれで川越育ちの川下清丸という、明治後期〜大正頃まで活躍した架空の小説家。さらにその小説のなかには、明治26年の川越大火や、煙草卸商「万文」(現蔵造り資料館)の小山文造なども登場する。作家であるアンナさんの専門は日本の戦後文学の研究で、現在、プラハや都内の大学で博士課程中の研究を進めている。

最後に

数年ぶりに、川越へ来たという二人と共に、見学の案内が少々できたことはよかった。再び、お二人が川越へ来るときには、旧川越以外の違う川越も案内したいし、又、川越のいろいろな人々にも会ってもらいたいと思った。それに、サツマイモも少しずつ好物になってもらえると嬉しい。

若きのアンナさんの小説は、海外への川越紹介の国際社会貢献でもあると思い、イモまんが資料館の館長日記として書かせていただいた。川越を愛する外国籍市民の一人として、これからもアンナさんの活躍を祈り、それを見守りつつ、川越人としての誇りも持ち続けたい。

執筆者:ドゥエル・ベーリ